この項目では、ビートルズの楽曲について説明しています。その他の用法については「I Will 」をご覧ください。
「アイ・ウィル 」(I Will )は、ビートルズ の楽曲である。1968年に発売された9作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ 』に収録された。レノン=マッカートニー 名義となっているが、ポール・マッカートニー によって書かれた楽曲。マッカートニーのボーカル とギター 、「口ベース」を主体としたバラード。
イギリスやアメリカではシングル・カットされなかったが、フィリピンではシングル『オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ 』のB面曲としてシングル・カットされた。
背景
「アイ・ウィル」は、1968年2月から4月にかけてインド のリシケーシュ に滞在していた時期に書かれた楽曲の1つだった。1968年春の段階でメロディはできていたが、歌詞はまだ出来上がっていなかった。マッカートニーは、同じくインドに滞在していたドノヴァン に曲を聴かせ、それに合った歌詞を考え出そうと試み、ドノヴァンは「月」を題材にした歌詞を考えたが、これには満足することはなかった。インドからの帰国後、5月にイーシャーにあるジョージ・ハリスン の自宅で、後に発売されたアルバム『ザ・ビートルズ』のデモをまとめる作業が行われたが、この時点でも未完成であったため、本作が採り上げられることはなかった。この4か月後にマッカートニーは歌詞を書き上げた。
本作について、マッカートニーは「今も自分が書いたメロディの中で、最も気に入っているものの1つ」と語っている。
レコーディング
「アイ・ウィル」のレコーディングは、1968年9月16日にEMIレコーディング・スタジオ のスタジオ2で開始され、翌日にオーバー・ダビングが行われた。ベーシック・トラックは67テイクで録音された。なお、ジョージ・ハリスン は本作のセッションに参加していない[ 9] 。
本作のレコーディングにおいて、リンゴ・スター とジョン・レノン はパーカッション を演奏した。スターはスネアドラム のリムショット でリズムを刻み、控えめにシンバル 、キックドラム 、タムタム も使用された。一方レノンは、時折マラカス を振りながら、スカル(打楽器 の一種)を叩いてリズムを刻んだ。同日にレコーディングされたテイク1は、1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー3 』に、テイク3は2018年に発売された『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) 〈スーパー・デラックス・エディション〉 』に収録された。
テイク19とされているテイクでは、ジャム・セッションが行われた。これは後に「Can you take me back? 」と題され、「クライ・ベイビー・クライ 」終了後に付け加えるかたちで収録された。この他にも「ロス・パラノイアス」、「ステップ・インサイド・ラヴ 」[ 注釈 1] 、「ブルー・ムーン 」[ 注釈 2] 、「The Way You Look Tonight 」[ 12] [ 注釈 3] も演奏された。これらの楽曲のうち、「ステップ・インサイド・ラヴ」と「ロス・パラノイアス」は、1996年に発売された『ザ・ビートルズ・アンソロジー3』に収録され、2018年に発売された『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) 〈スーパー・デラックス・エディション〉』には、「The Way You Look Tonight 」以外の3曲が収録された。
テイク29では、マッカートニーがアドリブで「I will 」の部分を「I won't 」と歌い、それに対してレノンが「Yes you will 」と返答して、演奏が中断している。このテイクも2018年に発売された『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) 〈スーパー・デラックス・エディション〉』に収録された。
テイク65の後に、レノンは「これで決まりだ、違うか?」と尋ねた。このレコーディングは8トラック・レコーダーに移されたのち、テイク68とナンバリングされた。
9月17日にマッカートニーは、トラック5に口真似したベースのパートを録音し、ミドルエイトと最後のセクションにマラカス が追加された。なお、マッカートニーはこの時に12弦ギター でいくつかフレーズを演奏している。
1968年9月26日にモノラル・ミックス、10月14日にステレオ・ミックスが作成された。なお、モノラル・ミックスとステレオ・ミックスとでは差異があり、マッカートニーによるスキャット・ベースがステレオでは冒頭から入っているが、モノラルでは2番目のヴァースから入ってくる。いずれのミックスもミドルエイト以降、マッカートニーのリード・ボーカルにADT がかけられた。
リリース・評価
「アイ・ウィル」は、1968年11月22日にアップル・レコード から発売されたオリジナル・アルバム『ザ・ビートルズ 』のB面8曲目に収録された。楽曲中では南アメリカを思わせるリズムが取り入れられており、マッカートニーは1968年のラジオ・ルクセンブルク (英語版 ) でのインタビューで「ハンブルクで巡業をしていた僕たちは、一晩中ロックを演奏していたわけじゃない。『マンボをやれ。ルンバはできるのか?』なんて言ってくる勤め人達もいたからね。ずっと『いや、できない』と言ってるわけにもいかなかったから、僕らも少しばかりマンボやルンバを演奏するようになった。だからこの手の曲には、ラテンアメリカのロマンティックな『イパネマの娘 』みたいなところがある」と語っている。
アルバム『ザ・ビートルズ』の発売50周年に連動して、『インデペンデント 』誌のジェイコブ・ストールワーシーはアルバムに収録された30曲の中から12位に選出した。ストールワーシーは、本作について「誰もマッカートニーのようなラブソングを簡単に書けないということを証明した楽曲」と評した[ 17] 。
クレジット
※出典
カバー・バージョン
脚注
注釈
出典
^ Lewis, Michael (2009). 100 Best Beatles Songs: A Passionate Fan's Guide . Philadelphia, Pennsylvania, U.S.: Running Press. p. 163. ISBN 1-6037-6265-5
^ ルウィソーン, マーク『ビートルズ/レコーディング・セッション』内田久美子 (訳)、シンコー・ミュージック 、1998年(原著1990年)、193-194頁。ISBN 978-4401612970 。
^ a b Lewis, Michael; Spignesi, Stephen J. (2009). 100 Best Beatles Songs: A Passionate Fan's Guide . Black Dog & Leventhal. p. 203. ASIN B0112OZ1EM . https://books.google.co.jp/books?id=ERIaCgAAQBAJ&pg=PT203&dq=The+Way+You+Look+Tonight+I+Will+The+Beatles&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwjBhqDf-frtAhXCc3AKHTDkCmUQ6AEwAHoECAUQAg#v=onepage&q=The%20Way%20You%20Look%20Tonight%20I%20Will%20The%20Beatles&f=false
^ Stolworthy, Jacob (2018年11月22日). “The Beatles' White Album tracks, ranked – from Blackbird to While My Guitar Gently Weeps” . The Independent (Independent News & Media). https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/music/features/the-beatles-white-album-tracks-ranked-paul-mccartney-john-lennon-george-harrison-50-anniversary-a8643431.html 2020年9月15日 閲覧。
^ Viglione, Joe. Read My Lips - Tim Curry | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年9月15日 閲覧。
^ Batdorf, Rodney. Songs from a Parent to a Child - Art Garfunkel | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年9月15日 閲覧。
^ Paradise Found - Tuck & Patti | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年9月15日 閲覧。
^ Jarnow, Jesse. Live Phish, Vol. 13: 10/31/94, Glens Falls Civic Center, Glens Falls, NY - Phish | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年9月15日 閲覧。
参考文献
ハウレット, ケヴィン (2018). ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) (スーパー・デラックス・エディション) (ブックレット). ビートルズ . アップル・レコード .
Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions . New York: Harmony Books. ISBN 0-517-57066-1
MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (Second Revised Edition ed.). London: Pimlico (Rand). ISBN 1-844-13828-3
Margotin, Philippe; Guesdon, Jean-Michel (2013). All the Songs: The Story Behind Every Beatles Release . New York, NY: Black Dog & Leventhal. ISBN 978-1-57912-952-1
Miles, Barry (1997). Paul McCartney: Many Years from Now . New York, NY: Henry Holt & Company. ISBN 0-8050-5249-6 . https://archive.org/details/paulmccartneyman00mile
Winn, John C. (2009). The Magic Feeling: The Beatles' Recorded Legacy, 1966-1970 . Three Rivers Press. ISBN 0-3074-5239-5
外部リンク
UK盤・US盤共通
1963年 1964年 1965年 1966年 1967年 1968年 1969年 1970年 1978年 1982年 1995年 1996年 2023年
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その他 (オデオン /パーロフォン /アップル )
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