Mod' Fish
『Mod' Fish』(モッド・フィッシュ)は、日本のシンガーソングライターである土屋昌巳の初のミニ・アルバム。 1997年10月1日にポリドールK.K.のクロスレーベルからリリースされた。前作『TIME PASSENGER』(1989年)よりおよそ8年ぶりに通算7枚目の作品としてリリースされ、作詞・作曲およびプロデュースは土屋自身が担当している。 レコーディングはロンドンのスタジオにて行われ、イギリスの著名なミュージシャンであるミック・カーンやジョン・ギブリンが参加、収録曲5曲の内3曲はインストゥルメンタルとなっている。本作における音作りや参加ミュージシャンは次作『森の人 Forest People』(1998年)に引き継がれることとなった。 背景1980年代の終わりに、土屋昌巳はテレビ局からエジプトのピラミッドをテーマにしたドキュメンタリー番組の音楽を依頼されたことからアルバム制作を開始することとなった[2]。番組用の音楽制作のために土屋は自らカイロに渡航、現地のコーディネーターとともに通常の観光では訪れることのない場所に行き、カイロの日常や不条理な光景を目の当たりにすることとなった[2]。結果として予定していたドキュメンタリー番組の制作は中止となったが、エジプトにおける体験は土屋にとって大きな疑問を残す結果となった[2]。その後土屋は5枚目のアルバム『TIME PASSENGER』(1989年)をリリースしたもののソロ・アーティストとしての活動を休止、1990年1月1日からロンドンに移住することとなった[2]。これに関して土屋は自身ではなく他者のために活動するべき時期が来たことが理由であると述べたが、その他の理由として当時は意識していなかったがエジプトでの体験で得た虚無感がソロ活動を一度休止することを決断させたのかもしれないとも述べている[2]。また、それ以外にも1980年代半ばころに日本国内ではテクノポップブームが終焉し、国外ではレニー・クラヴィッツやザ・ストーン・ローゼズなどの出現により過去のロックサウンドに回帰する流れがあったものの、日本国内ではユーロビートの台頭が予測される状態であったために自身の音楽活動が日本国内では困難になると判断したためであるとも述べている。 制作、音楽性本作制作時に土屋はロンドンに移住しており、ミック・カーンとの2人体制でロンドンにてすべてが制作された[3]。前作リリース後の新作を発表していなかった期間も土屋はセッションを頻繁に行っており、土屋はトリッキーやマッシヴ・アタックの登場によりサウンド作りが大きく変化した時期であると述べている[3]。当時はサンプルを制作するだけでも大変な時期であり、『TIME PASSENGER』の頃は既存の音を如何にして組み立てるかということがテーマで会ったのに対し、この時期には音そのものを一から制作する必要があったと述べている[3]。また、同時期にはボーカリストとしてよりもトラックメイカーとしての意識が高まっており、特にビートに対するこだわりが強かった時期でもあると土屋は述べている[3]。 LUNA SEA所属のSUGIZOは土屋に対し長年「ソロを作ってください!」と言い続けていたと述べている[4]。SUGIZOは幼少期から土屋の音楽を愛聴しており、LUNA SEAの初期の頃に六本木の店で初めて邂逅したと土屋は述べている[3]。SUGIZOは本作に関して、「一音一音すべての音が研ぎ澄まされ、すべての音に無駄がなく、すべての音に魂が宿っている。崇高な音楽」と述べたほか、世代やキャリアが異なるにも拘わらず懐かしさや斬新に感じられる点が最も重要な点であるとも述べ、「精神的に求める部分がものすごく近い。つまり前向きな、未来をみつめている音楽だからだと思う」と主張している[4]。 リリース、批評
本作は1997年10月1日にSUGIZOが主宰するレーベルであるポリドールK.K.のクロスレーベルからリリースされた[4]。SUGIZOは本作のリリースに当たり、以下のコメントを記している。
音楽情報サイト『CDジャーナル』では、本作が土屋の8年ぶりとなるソロ作品であることに触れた上で、収録曲の「Welconme」に関しては「ドラムンベースをバックに激しいギターがうなる」と表現し、「Frank」や「Alexis」においてボーカリストとしても健在であることを指摘、「美しい世界を感じさせる音楽だが、決して高飛車ではないのがポイント」と肯定的に評価した[5]。音楽誌『uv NO.23』において音楽ライターの今津甲は本作タイトルが「変調された魚」という意味であることや、インナーカバーの魚のイラストは土屋の妻が描いており、「人類が滅びたあとに誕生する不思議な魚の世界」という本作の構想の元となったイラストであることや、最終曲は土屋が妻に捧げた楽曲であることなどを紹介した上で、「作品は海にまつわるイメージがうずまき、漂っている。深海の、予想のつかない水の流れ方を思わせるような音空間を持つナンバーがある」と指摘、また「さまざまな実験的な愛に通じた1枚」であると肯定的に評価した[6]。 収録曲
スタッフ・クレジット
参加ミュージシャン
録音スタッフ
美術スタッフ
その他スタッフ
リリース日一覧
脚注
参考文献
外部リンク
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