第3次安倍内閣 (第1次改造)
第3次安倍第1次改造内閣(だいさんじ あべ だいいちじかいぞうないかく)は、衆議院議員・自由民主党総裁の安倍晋三が第97代内閣総理大臣に任命され、2015年(平成27年)10月7日から2016年(平成28年)8月3日まで続いた日本の内閣。 内閣の顔ぶれ・人事第3次安倍内閣の閣僚19人のうち、9人が留任した。8人が初入閣である。平均年齢は60.1歳となり、第3次安倍内閣より2.3歳若くなった。最高齢は麻生太郎(副総理兼財務相)で75歳、最年少は丸川珠代(環境相)で44歳(いずれも発足時)[1]。また、「希望出生率を1.8、介護離職ゼロ」にするという「野心的な目標」を実現する司令塔として加藤勝信(一億総活躍担当相)を起用した[2][3][4][5]。 山東派からの入閣はなく、民間人の入閣もなかった。 所属政党・出身: 自由民主党(細田派) 自由民主党(岸田派) 自由民主党(額賀派) 自由民主党(麻生派) 自由民主党(二階派) 自由民主党(石原派) 自由民主党(谷垣G) 自由民主党(石破派) 自由民主党(山東派) 自由民主党(無派閥) 公明党 中央省庁・民間 国務大臣
内閣官房副長官・内閣法制局長官
副大臣
大臣政務官2015年(平成27年)10月9日任命[11][12][13]。
内閣総理大臣補佐官
勢力早見表
内閣の動き発足時![]() ![]() 2015年(平成27年)10月7日、第三次安倍改造内閣発足後の初閣議において「一億総活躍という旗を高く掲げ、内閣が一丸となって、長年の懸案であった少子高齢化といった構造的課題に真正面から立ち向かい、新たな国づくりを力強くスタートさせるべき時が来た」として、東日本大震災からの復興の加速化、国内総生産600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロの実現、日米同盟強化による安全保障体制の推進に取り組むなどとする基本方針を決定した[16]。 内政農業政策2015年10月15日、全国農業協同組合中央会(JA全中)全国大会で、首相は環太平洋経済連携協定(TPP)について「コメなどの重要品目について関税撤廃の例外を確保した。私が先頭に立ち、今後、政府全体で責任を持って万全の対策をとりまとめ、実行していく」と理解を求めた[17]。 TPP資料問題2016年4月7日、民進党衆議院議員の玉木雄一郎が、政府が開示したTPPの交渉過程に関する45枚の資料が全て黒塗りばかりだったとし、「まっくろくろすけですよ。パネルにすると分かるんですが、まさに、のり弁当みたいになってますね」と政府を追及した[18]。なお、民進党は民主党政権時代の2012年3月31日に全国紙5紙に全面広告を出し、TPP交渉では各国の提案や交渉文書が4年間極秘扱いであることについて、当時の首相である野田佳彦が「当然」と答弁していた[19]。経済財政担当大臣の石原は玉木の質問に対して「交渉過程は原則的に非公開が外交交渉の原則であることもご理解いただきたい」と答弁した[18]。 一方で民進党は、衆院TPP特別委員会委員長の西川公也がTPP交渉の内幕本を出版することが守秘義務違反にあたるとの追及も行った[20]。8日のTPP特別委員会で、民進党衆院議員の緒方林太郎が行った「(西川が)交渉内容を詳しく知っているとしか思えない」などの指摘に対して、TPP担当相の石原が「印刷物の束が何であるか認識していないのでコメントは差し控える」と答弁し、審議が中断した[21]。民進党側は、入手した西川本のゲラで審議を続ける方針で[22]、TPP担当相の石原は派閥の会合で「もし西川氏が書いているとしたら、ゲラは西川氏と出版社にしかない。著者の許可なく一般に流布することは、著作権法にも抵触する」と語った[23]。 東京五輪に関するトラブル東京都知事に関する迷走東京都知事の舛添要一はかつて、リオ五輪閉会式におけるセレモニーについて「渋谷のスクランブル交差点で映せないかな。私がちゃんと旗を受け取ったぞ、というのを見てもらいたい」などと語っていた[24]。しかし、2016年4月27日の週刊文春での報道以降[25]、高額の海外出張や公用車での別荘通い、政治資金の家族旅行への流用、政治資金を使っての多額の美術品の購入などの公私混同問題に批判が集中[26]。五輪組織委員会関係者からは「知事の会見のたびに、後ろには大会エンブレムが映っているんですよ」と困惑の声が広がった[27]。 6月13日には東京都議会の総務委員会で一問一答形式の集中審議が行われたが、舛添はホテルでの面談の相手や家族同伴でのプロ野球巨人戦観戦の招待者について「政治家の信義として明かせない」と回答を拒否するなど疑惑の解明は進展しなかった[28][29]。また、舛添が「不信任の可決をしたら、(自分が)辞任するか、議会解散の二者択一しかない。(8-9月の)リオデジャネイロ五輪・パラリンピックをやっているときに選挙をやる姿を世界に見せるわけにはいかない」などとリオ五輪への出席に執着した事が逆効果となり[30][31]、全会派一致で不信任案提出という異例の事態に発展[32]。15日、舛添は辞職願を提出した[33]。約30年前に学者からマスコミの世界へと舛添を誘った田原総一朗は、「責任の一端を感じている」とし「『政治とカネ』にまつわる辞職が2人続いた。もうこんなことがないよう、メリハリの利いた人になってほしい」と主張[34]。また辞表提出の日にピート・ローズの通算安打記録を日米通算で上回り、舛添の東京五輪野球チームの監督構想にも名前が挙がっていたイチローは[35]、「(記録達成に号外も出ているとの問いに)そうなんですか。別の号外(東京都知事関連)の話は聞きましたがね。」と語った[36]。 東京都知事選挙上記のような経緯から、後任を選ぶ都知事選が知名度頼みのポピュリズム選挙になることへの懸念の声が以前よりあったが[37]、与野党の候補者選びは迷走した[38]。与党側は櫻井翔の父として知られる桜井俊に出馬を求めたが、桜井は「私の知名度ではない」と拒否[39]。また野党側も、俳優の石田純一が7月9日の会見で「結論から申しますと、野党統一候補ならば、ぜひ出させていただきたいということです」との発言を行って注目を集めたが[40]、妻の東尾理子などへの根回しがなく出馬を断念[41]。民進党都連側は、7月11日に革新派官僚として知られる古賀茂明に出馬要請し古賀も前向きに検討するとしたが[42][43]、翌日になって民進党執行部がジャーナリストとして知られる鳥越俊太郎に方向転換し、鳥越の擁立方針を決めた[44]。与党側は、自民党都連との対決姿勢を強める小池百合子が自民党の推薦を受けず立候補することになり、自民党の推薦する元岩手県知事の増田寛也との保守分裂選挙となった[45]。 選挙戦は14日に始まった。与党陣営では、自民党都連が同党所属の国会議員・地方議員およびその親族に対して除名をちらつかせる文書を配布するなどの締め付け行為をしていたことが判明し、都連会長の石原伸晃がラジオ番組で釈明[46][47]。野党陣営に対しては、鳥越の姿勢について知事経験者から批判があがり、神奈川県知事の黒岩祐治は地方自治を国会と連動させる手法を批判[48]。元宮崎県知事の東国原英夫は、鳥越が以前テレビ番組で「貴方は、宮崎で終わった」と暴言を吐いたことを「言われた人間は忘れない」とした[49]。小池に対しては、都議会解散のような手法が劇場型であるとの批判があがっており[50]、有力三候補がキャラクターを強調する「イメージ戦略」に依存する展開となった[51]。 鳥越は告示後初の週末を迎えても他の候補に比べて本人が街頭に立つことが少なく、鈴木宗男はこの省エネ選挙について「知名度頼みの選挙と受け止める」と語った[52][53]。また、政策集を公表せず選挙戦に入るなど異例の準備不足で[54]、7月17日の新報道2001では、猪瀬直樹がテレビ討論にも鳥越が出てこなかったことに言及した。一方、小池陣営では、自民党都連が「親族締め付け」文書を送付したことへの反発から、都民以外の支援者が全国から集まり始める事態となったが[55]、これについてプチ鹿島は、石原家が慎太郎の都知事選立候補によって都連に入れなかった経験があったとしても、それはブランドがあるからであって一般党員に求めるのはボンクラ息子だと批判した[56]。 7月21日の週刊文春で、鳥越のスキャンダルが報じられた。十数年前、ジャーナリストとして有名であった鳥越を信用する形で女子学生が鳥越の別荘に行ったところ強制わいせつに当たる行為[57]を強要されたため、女子学生の彼氏も含めて三者面談を行ったという記事[58]で、鳥越は「心から悔しい、怒りでいっぱいであります。」などと語り、21日に刑事告訴に踏み切った[59]。弁護団側は告訴によって事実無根が明確になったとし「この件につきましては、会見等を開くつもりは無い」と主張した[60]。マスコミ界隈では、鳥越がすぐに「訴訟」を匂わすことで有名だったという[61]。 選挙が終盤に差し掛かると、小池・増田が支持を伸ばす一方で、鳥越は勢いを失った[62][63]。上記文春報道がプラスにならない事に加え、『東京都をこうしたい』という具体的なものが見えない、「覇気がない」「年齢を感じさせる」といった声があり[64]、不安定な言動には当初より批判があった[65]。「私の最大の長所は、聞く耳を持っていること」[66]と主張する一方で、討論会をキャンセル[67][68]。演説時間が短い、介護離職の意味を知らないなどの失点も重なっていた[69][70]。 ラストウィークには、各陣営で注目を集める発言が相次いだ。鳥越は「当初、都政の知識が十分ではなかったが51年報道の現場でやってきた。3日あれば大丈夫。」と発言[71]。増田陣営では、石原慎太郎が小池のことを「厚化粧で大年増の女に任せるわけにはいかない」などと中傷し、小池が「日本の議会は、オッサンばかりだ。オッサンの論理で、これからも突き進むのか。オッサンの論理でずっとやっていけば、必ず他の国にも追い越される」などと応じた[72]。7月28日発売の週刊文春では自民党都連幹事長の口利き疑惑などが報じられた[73]。 31日、小池が投開票の結果290万票余りを獲得して当選した。8月22日のリオ五輪閉会式のハンドオーバーセレモニーにも出席する[74]。 都知事選挙の論調・エピソード
7月19日放送のバイキングで鳥越が小池に激しく詰め寄る場面があった。小池が街頭演説の中で鳥越を病み上がりと表現したかどうか鳥越が質問。小池は記憶にないと応じたが、鳥越は用意していたテレビ番組のニューステロップが写った紙を出し、そこには「選挙に勝てるからと言って政策のない人、病み上がりの人をただ連れてくれば良いというものではないんです」 との発言が書かれていた。小池は「それは失礼しました」と返答したが、鳥越は「ガンサバイバーは東京都に何十万もいる。その家族もいる。そういう人たちに、1回ガンになったら何も出来ないんだと決めつけるのは」と声を荒らげ、小池は「いや、そこまでは言ってないですよ。それを決めつけているのは鳥越さんでしょ。これが選挙なんですよ、坂上さん。」と司会の坂上忍に振り、坂上を困惑させた[89][90]。なお、猪瀬直樹、舛添要一と短期間で都知事が辞職を繰り返し、一回の選挙で50億の費用がかかることから[91]、高齢であり4回のがん治療経験のある鳥越の都政停滞リスクが選挙の争点の一つとなっていた[92]。 協賛金支払い騒動2016年1月15日、日本が夏季五輪招致に絡みIAAFやIAAFダイヤモンドリーグに対して協賛金400万ドル(約4億7200万円)から500万ドル(約5億9000万円)を支払っていたとWADAの独立委員会が指摘した(2013年当時の日本陸連の会長は河野洋平)。これについてはガーディアンやBTスポーツなどが「2020年五輪は(カネを払った)東京への報償だった」などの報道を行なっている[93][94]。東京都知事の舛添要一は都の関与について会見で「確認したところオリンピック・パラリンピック招致に関し、(少なくとも)都がそのような支出をした事実はない」と否定した[95]。また、日本陸連側もIAAFへの協賛金について「そういう情報は全く知らなかった」と否定した[96]。3月2日、フランスの司法当局は2016年と2020年の五輪招致活動について捜査を行っている事を明らかにした。仏検察当局者は「今は事実関係を確認する段階にある。何も証明されていない」と述べた[97]。 BT社による贈賄疑惑と電通の関与5月12日、フランス検察当局が、開催都市決定前後の13年7月と10月に、日本の銀行から「東京五輪招致」の名目で、当時国際オリンピック委員会委員だった人物の息子に関係するシンガポールの「ブラック・タイディングズ(BT)」社[98]の銀行口座に約2億2200万円が支払われていたと発表し、本格的な捜査に入った。この問題には、日本マスコミで報道がタブー視されている電通の関与が指摘されており[99]、民進党は玉木雄一郎をトップとする調査チームを立ち上げた[100]。13日、日本オリンピック委員会会長兼東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会理事長の竹田恒和は、招致計画作成や招致演説の指導、ロビー活動などの業務委託やコンサルタント料であるとし支払いを認めた[101]。 「ブラック・タイディングズ(BT)」社の代表はスイスのAMS社が雇っており[102]、AMSは「スポーツマーケティングで世界のリーディング企業のひとつである巨大広告企業の電通と長期にわたるパートナーシップを結んでいる」とHPに記載している[103]。国際陸連会長の息子は2013年9月にパリで高級時計を2000万円ほど購入しIOCの複数メンバーに配っており、日本側の資金が流れていたとみられている[104]。FACTAは、2016年2月の段階で電通の元専務の関与を主張しており、IAAFのスポンサーの大半はキヤノン、セイコー、TDKと日本企業ばかりで放送権の最大権料もTBSがもっており、電通と会長の息子が深い関係にあったことを指摘している[105]。この元専務は、日刊スポーツの取材に対して「(BT社との契約は)竹田さんから相談を受けたこともないし、そもそもタン氏すら知らない」と否定した[106]。 5月17日、民進党幹事長の枝野幸男は「電通が知らぬ、存ぜぬと常識から外れたことを言っている」と語り、国会への招致の可能性に言及[107]。また、民進党の調査チームでの会合で、JOCの関係者が涙声で「(オリンピック・パラリンピック招致)裏金調査チーム」の名称を変更するように懇願する一幕もあった[108]。18日にはJOCが調査チームの立ち上げを表明した[109]。JOC会長の竹田は、フランス当局から日本が捜査共助の要請を受けた場合、守秘義務を理由に開示してこなかったシンガポールのコンサルタント会社との契約書の提出を前向きに検討する考えを示した[110]。 新国立競技場の著作権問題新国立競技場の旧計画のデザインを担当したザハ・ハディドが、現在の契約を修正しデザイン料の残額を支払う代わりに旧計画の著作権をJSC側に譲り渡すよう求められたことを明らかにした[111]。ザハ事務所は2015年12月22日に決定した新デザイン案がザハのデザインに似ているとの主張をしており[112]、五輪相の遠藤利明は、著作権侵害があった場合は応募者責任になるとの見解を示している[113]。新国立競技場のデザインを手がける隈研吾は日本外国特派員協会での会見で「コンセプトが違うので、基本的に全く違う建物、全く違うデザインだということはわかっていただけると思う」と述べた[114]。 ザハ側は、JSCが新しい著作権条項を書面でザハ側に要請した後に、隈が新しい建築家だと装ってザハのデザインを用いたという主張をしているとみられるが、裁判では審査官が2つのデザインを比べ「トータルルック・フィールテスト」を行なうといった曖昧なものになるとされる[115]。 経済政策マクロ経済政策(アベノミクス)日本の政治史において初めて金融政策が争点となった2012年の衆院選挙[116]以降、マクロ経済政策として金融緩和が採用されており、2016年に入ってからも倒産件数の減少[117]や自殺の減少[118]、雇用の改善[119]などが目立つ一方で、消費の低迷がGDP拡大にブレーキをかける結果となった[120]。物価に関しては2016年2月のコアコアCPIがプラス0.8%[116]となっている(原油安の影響でコアCPIはマイナス圏が予想されている[121]。フィリップス曲線によると、期待インフレ率が上がると雇用が増加するとされる)。2012年以前は物価上昇率はマイナスで推移していたが、2013年以降は(消費税の影響を除いても)プラス圏で推移している[122]。 消費の低迷2015年は消費の低迷が続いており、9月から11月までの3ヶ月連続で1世帯あたりの消費支出が対前年比で減少した[123]。主要五大紙で消費税の影響についての言及は行われていない[124][125][126][127][128]が、産業競争力会議のメンバーである竹中平蔵は、「2012年の民主党政権の時の政策そのものが間違っている。当時の野党だった自民党政権がそれに賛成してしまった」と消費税について批判した[129]。野党の間では消費増税の先送り議論がすでに活発化しており、おおさか維新の会は1月18日に増税延期方針を参院選の公約に盛り込む考えを表明[130]。また、維新の党も江田憲司が「(消費税再増税の凍結で一致しない場合)参院選前の新党もあきらめざるを得ない」と民主党との合流構想断念を示唆した[131]。民主党の一部にも増税反対の意見があるが、朝日新聞はこの動きを「増税をやめて財政再建の道筋をどう描くのか」と批判した[126]。海外ではウォールストリートジャーナルが行き詰まりの原因について「第二の矢である財政出動は財務省の圧力を受けた」「第三の矢に盛り込まれた女性の雇用推進などの構造改革は、短期的効果を意図したものではない」「(消費税率引き上げで)個人消費が冷え込み、倹約ムードが広がった」といった見方を示し[132]、フィナンシャルタイムズのマーティン・ウルフは「消費増税はなすべきことの真逆になる」「最初のステップは核心にある問題、すなわち民間需要の不足という問題を認識することだ」と指摘した[133]。 2016年1月29日、家計調査で2015年12月の実質消費支出が前年比4.4%減と低迷[134]し、消費増税を行った前年に続く[135]大幅減少となった。 企業の内部留保問題2015年10月30日、経済財政担当大臣の甘利明は、「コアコアCPIは確実に上昇している。物価は目標に向かって歩んでいると思う」と主張する一方で、財務大臣の麻生太郎から労働分配率が低下しているとの問題提起があったと語った[136]。全産業の利益剰余金(いわゆる企業の内部留保)は354兆3774億円と8%増加[137]する一方で、企業側の賃金への還元は進んでいない[138]。なお、法人税については平成29年度に20%台に引き下げる予定となっている[139]。 賃上げ要請2015年11月5日、首相は政府と経済界による「官民対話」において経済界に対して賃上げを要請し、翌6日には日本銀行総裁の黒田東彦総裁が講演で2%の物価上昇目標の実現には賃上げが不可欠だとの認識を示した[140]。 大手3銀行労組のベア見送り問題三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほフィナンシャルグループの各労働組合がベアの要求を3年ぶりに見送る方針を固めた。これについて、連合会長の神津里季生は「開いた口がふさがらないような話だ」と批判した[141]。2015年3月期の3行の純利益は三菱東京銀行が1兆338億円[142]、みずほが6119億円[143]、三井住友銀行が7536億円[144]。 中小企業の賃金の増加4月4日、中小企業の賃上げ額が1995年の統計開始以来初めて大企業を上回ったことがわかった。大手との賃金格差が拡大したため、人材確保のために賃金引上げの動きが広がった[145]。 最低賃金の引き上げ2015年11月24日、首相の安倍は経済財政諮問会議で、現在全国平均798円の最低賃金を来年以降毎年3%程度ずつ引き上げて全国平均で1000円を目指すことを表明した。先進国の主要都市では最低賃金がおおむね1000円を超えているのに対して東京では907円と伸び悩んでおり、企業の内部留保や手持ちの現金・預金が増える傾向にあることを踏まえ、政府内では「内部留保をもっと賃上げに使うべきだ」という発言が相次いでいた[146]。 2016年1月8日の衆院予算委員会で、民主党の山井和則が実質賃金の低迷について問いただしたのに対して、安倍は景気が回復し雇用が増えていくメカニズムを解説した上で、「私が50万円、妻が25万円であったとしたら、75万円に増えるわけでございますが、2人で働いているわけですから、2で割って平均は下がるわけです」と答弁。これが、パート労働者の平均月収は8万4000円程度である(最低賃金としては、月額25万円を稼ぐためには8時間労働を20日行って時給が1563円になる)といった理由から炎上騒動となった[147][148]。山井は安倍政権では名目賃金は伸びているが実質賃金では民主党時代の方がよいといった主張をかねてより行なっていた[149]。 7月26日、厚生労働省の審議会において、最低賃金を引き上げる目安額が過去最大となる全国加重平均24円でまとまった[150]。 格差問題安倍政権の政策に一定の影響力をもっているとされる野口旭は、格差について「非正規の若年層と資産を持たない高齢者の貧困化が進み、住民税を支払えない人口が2400万人と試算されている」と分析し消費低迷の原因になっていると指摘した[151]。実際、首相のブレーンである本田悦朗の提案によって住民税を払えない高齢者に対する3万円の給付金が補正予算に盛り込まれた[152]。この再分配政策に対して民主党側からバラマキだとの批判があがっていたが、安倍は2016年1月6日の衆院本会議での民主党代表の岡田克也への答弁で、消費税増税延期が争点[153]になっていた2014年の総選挙時に、当時の民主党代表であった海江田万里が高齢者への給付を行なうべきだと8党党首討論会[154]の場などで主張していた経緯を説明した上で「天に対してブーメランを投げているようなものだ」とこきおろした[155]。一方、民主党側は代表代行の蓮舫が海江田の発言について「消費税率を10%に上げることで生まれる安定財源によって毎月5千円を継続的に給付する」三党合意が守られているかどうかを質問したと反論した[156]。 同一労働同一賃金政府は、一億総活躍社会の実現に向けて非正規の労働者の待遇改善をめざして労働者派遣法の改正も含めた検討を行い、同一労働同一賃金の実現を目指している[157]。5月中に取りまとめる「1億総活躍プラン」の中で同一労働同一賃金の方向性を示す方針[158]。 正社員の増加2016年2月16日、総務省の発表した2015年の労働力調査で正社員数が前年比26万人増の3304万人になったことが分かった。正社員の増加は8年ぶりで、雇用者数は44万人増えた[159]。 就職内定率の増加2016年2月12日、高卒の就職内定率が90%を越え、25年ぶりの水準になっていることが分かった[160]。同年3月18日には、大卒の就職内定率も8年ぶりの高水準であることが分かった[161][162]。 日本経済新聞社の情報リーク問題2016年1月29日、日銀がマイナス金利の導入を行ったが、その際に会合終了前であるにもかかわらず「追加的な金融緩和策としてマイナス金利政策の導入の議論に入った」との報道が行われた[163]。日本経済新聞側はリークを認めておらず、広報担当者は電話取材には応じない姿勢をみせている[163]が、米国ではFRBと司法省の共同調査が入る可能性のある事態で、「相当まずい問題だ」「こういった情報漏えいが続くと、マーケットの中でマスコミへのリークさえ見てれば良いという見方を構築することになる」といった声があがっている[163]。 2016年2月3日、衆院予算委員会における民主党の玉木雄一郎の質問に対して、日銀総裁の黒田東彦は「(議論の内容を知り得た日銀の役職員、および政府関係者を対象として)当該報道機関の記者と接触した事実の有無を調査している」と答弁した[163]。 マイナス金利政策1月29日に日銀はマイナス金利政策を導入した[164]。これについては「(大量に国債を購入してきたこれまでの)政策の限界を印象づける」といった批判がある[165]一方で、撤廃された付利は民間銀行や短資会社への支援のために2008年11月に導入されたものだとの指摘もある[166]。この決定は5対4の小差で決定したが、反対したのは前日銀総裁の白川方明時代に任命された審議委員で、金融業界出身者が3人[166][167]。 ドイツ銀行の経営不安[168]から、欧州株式市場が銀行株を中心に売られ2月8日には約1年ぶりの安値となった。域内全体の銀行株指数は2012年のギリシャ危機以来の低水準[169]。これを受けてリスク回避の動きから円高が進行し1ドル115円台に突入した[170]。日銀が1月29日に打ち出したマイナス金利は、対象となる預金の規模が限られるため、世界経済減速懸念に打ち消される形となった[171]。 国際金融経済分析会合の開催と増税の2年半延期2016年2月第2週の株価の週間下げ幅が、リーマン・ショック直後の2008年10月以来の大幅下落となった[172]。年明けから続く中国や資源国経済減速懸念に加え、イエレンFRB議長発言を受けてのアメリカ経済減速懸念などにより、リスク回避による円高が進んだ[173]。一連の売りの発端となったのはドイツ銀行で、2015年決算が巨額赤字となり、自己資本に充当している偶発転換社債が自己資本が目減りすると利払いが停止される債券であるため「巨額赤字が続けば利払いが打ち切られる」との臆測がパニック売りにつながった[174]。また、中国の貿易統計も外需、内需ともに振るわず、1月の貿易総額は2年連続の大幅縮小となった[175][176]。 このような情勢を受けて、政権内で |